名刺・一般印刷 エースプリント

インタビュー「北斎名刺を世界に広げたい」

エースプリントという会社 【公式ホームページはこちら】

ーー エースプリントの簡単な歴史をお聞かせいただけますか
村方 創業は1987年10月で、うちの父が初代で創業した会社です。最初は墨田区石原町4丁目で法恩寺橋の近所で創業しました。20年ほど前に太平町にに引っ越してきたっていう形になります。 今年で37年。もう少しで40年ですね。

ーー 事業内容について
村方 業務は主に一般印刷と呼ばれるチラシや伝票、封筒などの類を扱っています。あとは特殊なもので言えばアクリルキーホルダーとか、ノベライズのものに対して名入れ印刷もおこなったりしています。最近では個人の方の記念品などでもご利用いただいています。

ーー お客さんはどういう方が多いですか
村方 法人BtoB(Business to Business)がメイン。名刺はもちろんのこと、チラシや封筒、書類や広報誌とか、複写伝票など一般印刷が多いですね。あとは販促物の名入れとかもありますね。。

今は比重的にはまだ少ないけど、BtoC(Business to Consumer)に力を入れていきたいなっていうそういうタイミングでもあります。

ーー BtoCに切り替えていくような、会社の状況であったり社会状況であったり、きっかけはありましたか

村方 やっぱり大きかったのはコロナの中でBtoBがほとんど動かなくなった。何とかして仕事の幅を広げていきたいという中で、規模的にはそこでBtoBで営業かけていって新たに取るってのは非常に難しかった。そうなったら、その商店街活動にも関わってくることなんですけど、地域に目を向けて、地場のお客さんをそこで拾っていければなっていうところで始めてますね。 

ーー 何か具体的にされたことはありますか
村方 まず始めたのはSNSです。「自分の会社がこういう会社ですよ、こういうことができるんですよ」っていうことをまず発信していかなきゃなと。今まではBtoBの中では依頼された注文をこなす仕事をして、宣伝や営業活動なんて全くやっていなかったんです。でも、その状況を変えようと思って、当時はTwitter(今のX)を始めました。それで外向けに発信する活動をスタートして、そこをBtoCとして意識して初めて取り組んだ、って感じですね。

ーー 最初は何を語りかけましたか?
村方 最初は下町の印刷屋ですって当たり障りのないことを発信してました。ただ、その頃はすでに格安のネット印刷が普及していて、値段で差別化するのも難しかったんです。かといって、「これができます!」っていうような明確な強みや特色など、客観視できていなかったので、無難な形で始めた感じでした。

ただ、当時はコロナの影響でSNSを始める企業さんがすごく多くて、同じように「何とか発信していきたい」と考えている人たちがたくさんいたんです。そのおかげで、フォロワーを増やしやすい環境だったのも大きかったですね。周りの発信を見ながら、「こういうことを発信してもいいんだ」とか、「こんなやり方もあるんだな」って、手探りながら自社でできることを徐々に発信していった感じです。

ーー ゼロから今はちなみに
村方 今は9,400フォロワーくらいです。

エースプリントといえばスタイルカット名刺

ーー エースプリントといえば、スタイルカット名刺ですが、導入のきっかけはSNSやコロナでしょうか?

村方 当時、印刷で個性を出すっていうのはすごく難しかったんですよね。特に名刺なんて、個性を出そうとすると逆に不便になることが多くて。例えば、ケースに入れるときに折れやすかったり、サイズが合わなかったり。でもその中で、名刺のケースにきっちり収まる寸法だけは守りながら、外周だけを大胆にカットした名刺を作ったんです。

正直、もらった人も渡す人も使いづらいし、普通だったら「そんなの邪道だ」って言われるようなものなんですけど。でも、あえてそういう「ちょっと変わった」「誰もやらないような馬鹿げた名刺」を作りました。そしたら、逆に「こんな名刺あるんだ!」って注目してもらえるようになったんです。結果的にそれが大きかったのかなと思います。

ーー スタイルカット名刺の特徴を教えてください
村方 ショップカード系とか型抜きですね。トムソン抜きっていうかが元々あるんですが、その比較で説明します。

まずレーザーは型代がかからないんで本当に小ロットで好きな数だけできます。
型代の最低金額が大体1万から1万5000円かかるんで、それがない分だけでも全然違ってくると思うんですね。 要は印刷代は同じ。加工賃は抜き加工にしてもレーザー加工にしても加工賃は発生するんで、そこの型代の1万5000円が浮くか浮かない可能性が非常に大きいと思います。

ーー それは大きいですね
村方 例えば名刺を100枚作るとします。100枚の名刺が例えば2000円でレーザーの加工賃が1000円だとすると、合計3000円でできる。先ほどの型抜きの方も、抜きまで含めて同じ3000円なんですけど、初期ロットとしてそこにプラス1万5000円がかかるので、その差が大きい 。

あとは細部までカットできるのが特徴。トムソン抜きとかではできない鋭角な加工や、微細な部分まで表現できるっていうのが強みかなと。あとは納期ですね。抜型を作らなくていいんで、その分の短縮もできます。

ーー ちなみにどのぐらいの納期と発注数でできるんですか?
村方 データさえあれば印刷に中2日、加工に中2日です。おおよそ1週間ぐらい見ていただければ問題なくできますね。

最低発注数は 10枚から。ただ数が少ないと単価が上がっちゃうから、100枚がお勧めです。

ーー メーカーでも名刺の事例はあったんですか?
村方 アクリル板や木材もカットできるんで、厚みは制限があるけど、いろんなものがカットできるで、いろんな提案はもらってました。

そんな中でウチは紙の印刷がメインだったんで、紙をカットしようとしたんけど、苦労したかな。工夫をしないと、何でも切れるっていうことは出力が強いんで、紙が焼けちゃったりとか焦げちゃったりする。 下手したら火事になっちゃうので、ずっと見てなきゃいけない。レーザーを照射するパワーとスピードのバランスに苦労しました。試行錯誤の繰り返し。でも、そのおかげでウチの特徴の一つである、裏面に焦げのない名刺ができたは嬉しかったですよ。

ーー 例えばうちのネコ名刺作りたいのってでネコの写真を送ってきただけではダメですか?
村方 お客さん自身が作ってきたデータに対して加工できるか?という点で言えばできます。 方法としては、フォーマットがあるんで、そこをお客さんの方でやっていただかなきゃいけない部分ある。支給データでも、うちの方で作るデータ、両方ともできます。

ただ、すごく細かい柄や、髪の毛みたいな細い線とか、限度はあるけど、基本はできないことはないですね。

ーー 面白い名刺の例をご紹介いただけますか?
村方 古墳の形、埴輪の形、カセットテープ、あとは食べ物に言えばパスタとか。カセットテープに関しては、ジェネレーションギャップを楽しめるのが特徴かな。この名刺を渡して、カセットテープを知らない人に対しては、これって何ですかって話の広がりがあるし、知ってる人は懐かしいと食いついてくれる。 形状的にも名刺のちょうどいいんで人気ですね。

ーー そう来たかっていう、なんか面白さ、ギャップですかね
村方 そうですね、うん。それで言うと、先ほど言った公衆電話。フロッピーディスクなど、その時代にあった生活用具などを切り抜いてやってるんで、昭和という括りで商品を作ったことはありますね。

例えばケーキであれば、ホールケーキの形に切り抜いたケーキで味を変える。チーズケーキだったり、ショートケーキだったりみたいなこともできますし。

ーー ということは大体のものができちゃう
村方 そうですね。 あとは形状でどうしてもその名刺の基本のサイズは決まってるんで、強度的な問題も出てくる。あとはその名刺として名前をしっかり乗せなきゃいけないスペースがあるかどうかそういう基本的なことだと思いますね。

ーー 名刺以外の活用方法とか事例は何かありますか?
村方 名刺以外だと、結婚式で使う招待状みたいな形で使うのもある。コストは上がっちゃうけど、自分たちの最良の日をこだわりをもって作りたいって人たちには喜んでもらってます。

北斎名刺の誕生

葛飾北斎・冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏

墨田のレジェンド葛飾北斎
2024年7月、20年ぶりに新紙幣が発行され、千円札の裏面に葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が図柄として採用された。
葛飾北斎(1760-1849)は、江戸時代を代表する浮世絵師で、現在の墨田区に生まれ育った。北斎は90回以上の転居を繰り返したが、生涯を通して墨田区周辺を拠点としたとされる。代表作「富嶽三十六景」などの多くの名作は、地域の風景や庶民の暮らしからインスピレーションを得た。現在、墨田区には「すみだ北斎美術館」があり、彼の功績を称え、地域の文化的アイコンとして親しまれている。北斎の作品は、墨田の地場産業や観光資源にも影響を与えている。

ーー 墨田区といえばやっぱり葛飾北斎じゃないですか。名刺にも北斎のデザインを使ってらっしゃいますけども、その辺りのお話をお願いします
村方 葛飾北斎に関しては墨田区がすみだ北斎美術館を作るとき、所蔵品の版権使用料を墨田区の事業者さんには、格安で利用できますよっていうのがあったんで、まずそこで興味を持ちました。そこから実際どの商品にどう作っていけばいいのか、どう落とし込んでいけばいいのかってのは結構悩んだ。まずは北斎のことを素人いろいろ調べましたね  それもあってまずは北斎のことを知ろうといろいろ調べましたね  それもあって富嶽三十六景一覧のガイドブックみたいなものとか、折袋とか、こういうアクリルの商品とか、いろいろ作りはしましたけど、宣伝下手なんで実際あんまり出なかったですね。

ーー 北斎に関しては墨田区の方は親近感あるんでしょうか?
村方 皆さんにとっては「生誕の地」というイメージがすごく強いんじゃないかなと思いますね。90回近く引っ越してるけど、ほとんど墨田から離れてないってのも親しみがあるかな。

ーー 北斎を勉強する中でリスペクトする部分はありますか?
村方 北斎って、デザイナーとしてもめちゃくちゃ才能があったと思うんですよね。たとえば「浪裏」で有名な波の三角の描き方。あれって、実は北斎の完全オリジナルじゃなくて、「波の伊八」って呼ばれる人の手法を参考にしたんじゃないかって言われてる。それをちゃんと自分流にアレンジしている。そう考えると、当時のトップデザイナーだったんだなって思います。それに加えて、肉筆画もしっかり描ける実力派だったんで、画力も間違いなくピカイチだったんじゃないかなと。

さらに北斎って、「北斎漫画」っていう絵の指南書をたくさん残してるんだよね。「こんな絵を描きたいなら、こうやって描け!」みたいな感じで、絵の描き方を後の世代に伝えようとしてたわけ。才能がすごいだけじゃなくて、それをちゃんと次の世代に引き継ごうとしたところが、本当に北斎のすごいところだなって思う。

ーー 北斎美術館はインバウンドの方が今すごいんですよね。 平日なんて7割8割がインバウンドの方とお聞きしています。そのインバウンドの方がそれだけやっぱり北斎にに注目する。 どう分析しますか。
村方 当時、ヨーロッパで主流だった絵画の構図を、北斎の絵が完全に塗り替えるような形で評価されたんだよね。それがすごくセンセーショナルで、今でもその印象がずっと残ってるんだと思う。たぶん、「日本といえば」っていうイメージが、そのときに刷り込まれたのかなって感じるよね。

ーー よく言われるのは、北斎ブルー
村方 ベロ藍だね。三十六景の初刷りはみんな藍刷だった。北斎美術館も初版の藍刷はいくつか持ってるはず。

ーー なるほどその三十六景、北斎漫画以外で、今後北斎でやってみたら面白そうだなっていうのって何かありますか。
村方 やってみて面白そうなのは、北斎が病気になったときに描いた疱瘡絵とか、体調が悪いときによく厄除けで描いてた鐘馗(しょうき)の絵が残ってるんだよね。そういう小さい作品の中に、今の「ゆるキャラ」に近い感じのものもあるんじゃないかなって思ってる。そんな面白いキャラっぽいのを見つけ出したら、結構面白い発見になるんじゃないかな。

インバウンドに対して

ーー では、先ほどのインバウンドの方に対して、この名刺っていうのは、何かアプローチっていうのをお考えですか。
村方 インバウンドの方に関しては名刺かな。もともと名刺の文化は海外から入ってきたものだけど、バブル期に日本で作られた名刺が世界中で配られたんだよね。その結果、日本独自の名刺文化が、海外のそれとはちょっと違う形で発展していった。

ーー 簡単にご説明いただくとどんな感じ
村方 欧米で言うビジネスカードって、メモ帳代わりに使うことが多いんだよね。商談中に名刺の裏にメモを書いたりするのが普通なんだけど、日本では名刺って相手からの「いただき物」として扱うから、そういうことをすると失礼にあたるんだよね。
でも、逆にその日本独特の名刺文化を活かして、名刺自体を一つの作品にしてみたら、海外の人には新鮮に映るんじゃないかな?
そういうデザインの名刺を作って販売できたら面白いかなって思ってるんだ。



会社概要

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